Tomofumi Hashimoto/橋本 倫史
“ドライブイン” 2018/07/13 - 2018/07/22 12:00 - 20:00 会期中無休 / DAILY OPEN


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「大きな声で叫びたくなるようなこともありましたよ」澄子さんはそう言って笑った。「でも、ここから海を眺めていると、段々落ち着いてくるんです」
石川県羽咋郡「ロードパーク女の浦」岡本澄子さん


この度、photographers’ galleryでは企画展として橋本倫史写真展「ドライブイン」を開催する運びとなりました。橋本倫史は、ライターとして雑誌をはじめ様々な媒体で取材・執筆活動をする一方、これまでいくつものリトルプレス(自費出版の小冊子)を制作してきました。
2017年4月には、日本各地のドライブインを取材した『月刊ドライブイン』を創刊し、2018年6月下旬に12号目を刊行し、終刊を迎えます。
『月刊ドライブイン』では、北は北海道、南は沖縄まで、計22ヶ所のドライブインを取材し、それぞれのドライブインに流れている時間やそこで働く人々の声が、橋本のテキストと写真によって丁寧かつ詳細に記録されています。本展では『月刊ドライブイン vol. 1-12』に収録された写真を中心に、橋本のテキストとともに展示いたします。

▼展示内容
photographers’ gallery・KULA PHOTO GALLERY/インクジェットプリント、カラー、44点。

▼月刊ドライブイン
https://pg-web.net/shop/others/drivein12/
https://hb-books.net/

gekkan_drivein


大人になるまで、ドライブインの存在を知らなかった。1982年生まれの僕は、家族でドライブに出かけたときに立ち寄るとすればハンバーガーショップかファミリーレストランで、ドライブインに入ったことは一度もなかった。
きっかけは原付で旅に出たことだった。鹿児島で奇妙な建物を見つけ、原付を停めて近づいてみると、それはドライブインだった。そこから東京に引き返すあいだ、何十軒とドライブインを見かけた。すでに廃墟と化したドライブインも多かった。これだけの数が存在しているからには、ドライブインの時代があったに違いない。そう思って、日本全国のドライブインをめぐる旅に出た。
一軒一軒のドライブインが創業されるまでにはドラマがあり、その場所にドライブインが創業されるのにも理由があった。それを拾い集めてゆけば、日本の戦後の姿のようなものが浮かび上がってくるのではないかと思い、『月刊ドライブイン』というリトルマガジンを創刊した。
そうして記録を重ねるうちに僕が惹かれていったのは、何十年とお店を切り盛りしてきた店主たちの人生だ。ドライブインを利用するのは、観光客であれトラック運転手であれ、移動の途中に立ち寄る人たちだ。店主たちは何十年と一つの場所に留まり続けながら、笑顔で客を迎え続けてきた。ここにある写真は、その姿を記録したポートレイトだ。

橋本倫史



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    松本清張「ゼロの焦点」の舞台となった能登金剛。これを見下ろす断崖絶壁に建つ「ロードパーク女の浦」は、かつて観光バスで溢れ返っていた。


  • 03

    「ほとんどお客さんはこないけど、ボケ防止のために続けるつもり」90歳を過ぎた今も、晃子さんは店に立ち続ける。
    北海道十勝郡「ミッキーハウスドライブイン」千葉晃子さん


  • 04

    帯広から東へ70キロ走ると、ドライブイン銀座が現れる。観光名所がある町でもないのに、5軒ものドライブインが建ち並んでいる。ただし現在も営業を続けているのは「ミッキーハウスドライブイン」ただ1軒だ。

トークイベント
「風景を記録する」
橋本倫史×北島敬三(写真家)

中学二年の秋に引っ越しをした。引っ越しといっても同じ町内で、通う学校も変わらなかったけれど、それまで借家に暮らしていたこともあり、引っ越しを心待ちにしていたのをおぼえている。今になって後悔しているのは、引っ越し前に旧居で写真を撮っておかなかったことだ。父が記者をしていたこともあり、旅行に出かけたり行事があったりするたびに写真を撮っていたけれど、家の中で普段通りに過ごしているときの写真は一枚も残っていない。今ではもう別の家族が暮らしているその家に、もう二度と入ることはできない。それがきっかけだとは言わないけれど、残しておきたいという欲求が強くある。写真を撮り、話を聞いて言葉を綴り、記録したいと思う。
『月刊ドライブイン』というリトルプレス を作り始めたのも、あと何年かすれば消えてしまうかもしれないドライブインの風景を、あとになって懐かしむのでなく、げんざいの風景として記録したいと思ったからだ。そうして風景を記録するということについて、北島敬三さんと話してみたいと思う。

橋本倫史

7月20日(金)19:00〜 
参加費:1000円 
定員:25名(要予約)

▼ご予約はこちらから
https://ssl.form-mailer.jp/fms/823a1b4e576875



keizo-kitajima, Tomofumi-Hashimoto

 

橋本倫史 HASHIMOTO Tomofumi 略歴

1982年、広島県東広島市生まれ。2007年に『en-taxi』(扶桑社)に寄稿し、ライターとして活動を始める。また、2007年にリトルマガジン『HB』を創刊。以降、『hb paper』、『SKETCHBOOK』、『月刊ドライブイン』などいくつものリトルプレスを手がける。