Ichiro Kojima/小島 一郎 “小島一郎のトランプ” 2004/05/16 - 2004/05/29 12:00 - 20:00 月曜休 / MON CLOSED

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北国の風景や人々を特異な感性で写し出し、戦後写真史の中に意義深い痕跡をとどめる写真家・小島一郎(1924-1964)の展覧会を開催いたします。大正13年に青森市で写真材料店を営む家に生まれた小島一郎が、写真家として本格的に活動したのは、昭和29年頃から早過ぎる死に至る昭和39年までの、わずか10年ほどに限られています。この間小島は、厳寒の津軽や下北をくまなく歩き、その風景を独特の解釈で印画紙に焼きつけていきました。
本展では、このほどヒステリックグラマーから出版された「小島一郎写 真集」に含まれる 未発表のプリントを中心とした約30点の作品と「小島のトランプ」として知られる名刺大のプリントを、弘子夫人の多大なる御協力を得て、展示いたします。貴重なヴィンテージプリントを展観することで、この孤高の写 真家が近代の写真史に残した足跡について、もう一度深く考える契機にしたいと思っております。 <高橋しげみ >


関連イベント

5/22(土)「小島一郎の可能性」
鎌田清衛×大田通貴×中居裕恭×高橋しげみ

レクチャー「小島のトランプ」高橋しげみ

座談会「今、なぜ、小島一郎」
鎌田清衛×中居裕恭×大田通貴×高橋しげみ

展示風景

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プログラム
19:00-19:40 レクチャー「小島のトランプ」 高橋しげみ
19:50-20:45 座談会「今、なぜ、小島一郎」 鎌田清衛 中居裕恭 大田通貴 高橋しげみ 

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小島一郎は、生まれ故郷の青森を拠点にしながら北国の風景を撮り続けた孤高の写真家として、これまで語られてきました。出生の地、津軽を背景に、家業の重圧、上京後の挫折、早すぎる死といった短い人生の中の劇的なエピソードと、生涯唯一の写真集『津軽』を通じての限られたイメージは、人々にあまりにも強烈な印象を与えます。それゆえに、ともすると小島一郎という写真家をめぐる批評の領域を狭めてしまう危険性もまたはらんでいます。
今回のレクチャーでは、小島がベタ焼きに代わるものとして考え出した通称「小島のトランプ」と呼ばれる手札型の作品群を、資料やスライドを用いて検証しながら、単独のプリントからは見えてこなかった小島写真の解釈の可能性について考えてみます。続く座談会では、小島一郎とそれぞれの文脈で深く関わった方々に、異なる角度から小島一郎について語っていただくことで、また、こうして今、小島一郎を語ることの意義について話し合っていただくことで、写真家・小島一郎の批評に一つの小さな風穴をあけることをめざします。(高橋しげみ)  



小島一郎写真集『hysteric11』の出版にあわせて、二会場で出版記念写真展が開催されました。プレイスM会場は、蒼穹舎の大田通貴氏が企画、photographers’gallery会場は、青森県文化観光部文化振興課学芸員の高橋しげみ氏の企画による写真展です。当会場では、「小島のトランプ」と呼ばれる手札サイズの写真が展示されました。また、高橋氏は、青森県弘前市のharappa(アートNPO)にて、レクチャーなども手がけておられます。今回はその関連イベントとして、レクチャー+座談会「小島一郎の可能性」が行われました。
第1部の高橋氏によるレクチャーでは、スライドによる作品の解説や小島一郎の仕事について詳細に解説していただきました。貴重な資料も数多く、とくに、「小島のトランプ」の写真については、スライド一枚一枚に対して、撮影地や当時の状況など丁寧な説明が施されました。さらに、小島一郎と撮影を共にした経験のある鎌田清衛氏を加えて、当事者でしかわからない貴重な解説を聞く機会となりました。


     

高橋しげみ氏によるレクチャーの様子
高橋しげみ氏によるレクチャーの様子
スライドは、小島が撮った貴重なカラー作品。
スライドは、小島が撮った貴重なカラー作品。


第2部は、レクチャーにも参加していただいた、生前の小島一郎と親交の深い鎌田清衛氏、写真集「残りの花」現在、プレイスM運営メンバーでもある写真家の中居裕恭氏、数多く写真集を手掛けられている蒼穹舎の大田通貴氏が加わり、小島の仕事、小島自身の生き様、さらに、タイトルにもあるように、現代における小島の写真の可能性についての見解が示されました。高橋氏の質議に対し、各人それぞれの小島論が繰り広げられました。鎌田氏によるお話は、実際に小島と津軽を撮影していた時の体験談や、その後の酒宴の様子など、プライベートな小島の人物像が浮き彫りになりました。普段、聞く事のできない貴重な逸話ばかりでした。
八戸に「北点」という場所を持ち、同じ北国を取材されている中居氏は、小島の痕跡を追った経験談や場所と写真との関係性など写真家としての小島が立っている位置を提示されました。大田氏は、小島の写真との出会いから、写真集にすることの経緯まで、高橋氏、鎌田氏、中居氏の意見を編集者の眼、時には写真家の眼として総括的にお話して下さいました。実に幅広い談義となりました。 座談会の最後に、会場にみえられていた弘子夫人の話によって、伝説という名の深い霧に包まれていた小島一郎の人物像を垣間見ることができたのではないでしょうか。  


座談会風景 左から高橋氏、大田氏、中居氏、鎌田氏
座談会風景
左から高橋氏、大田氏、中居氏、鎌田氏

「小島のトランプ」展DM
「小島のトランプ」展DM
小島一郎写真集『hysteric11』 著者:小島一郎 発行者:北村信彦 編集制作:綿谷修、大田通貴(蒼穹舎)、白谷敏夫(ノマド) 協力:小島弘子、高橋しげみ 発行所:ヒステリックグラマー TEL 03-3478-8471 お問い合せ:蒼穹舎 TEL 03-3358-3974
小島一郎写真集『hysteric11』
著者:小島一郎
発行者:北村信彦
編集制作:綿谷修、大田通貴(蒼穹舎)、白谷敏夫(ノマド)
協力:小島弘子、高橋しげみ
発行所:ヒステリックグラマー TEL 03-3478-8471
お問い合せ:蒼穹舎 TEL 03-3358-3974


小島一郎 (1924-1964)

■略歴
1924 青森市に写真材料商を営む父平八郎と、母たかの長男として出生。
1944 入隊。中国各地を転戦。
1946 復員。家業の材料商を継ぐ。
1953 松井弘子と結婚。
1961 上京。 
1964 死去。
■展覧会歴 *個展
1958 *「津軽」 (小西六ギャラリー・東京)
1962 *「凍れる」 (富士フォトサロン・東京)
1990 「戦後写真・再生と展開」 (山口県立美術館)
 ~91 「戦後写真と東北」 (宮城県美術館)
1994  *「津軽」 (JCIIフォトサロン)
1998 *「小島一郎写真展 -津軽の風土を撮る-」 (青森市民美術展示館)
■写真集
1963 『津軽 ―詩・文・写真集―』 (文・石坂洋次郎、詩・高木恭造) 新潮社