Yutaka Takanashi/高梨 豊
“Last Sieen’-e (for Last Sieen’)” 2011/11/23 - 2011/12/11 12:00 - 20:00 月曜休 / MON CLOSED

Yutaka Takanashi/高梨 豊: “Last Sieen’-e  (for Last Sieen’)”
Yutaka Takanashi/高梨 豊: “Last Sieen’-e (for Last Sieen’)”

この度photographers’ galleryでは、企画展として高梨豊展を開催する運びとなりました。本展は、photographers’ galleryとKULA PHOTO GALLERYの2会場を使い、新作「LAST SEEIN’」と「SILVER PASSIN’」を展示する2部構成となります。高梨豊は1950年代末に写真家として出発して以来、半世紀以上のキャリアを通じてさまざまな方法論を駆使し、変化し続ける「都市」という主題に取り組んできました。66年に『カメラ毎日』にて発表された「東京人」、写真同人誌『PROVOKE』の刊行から写真集『都市へ』へまとめられることになる作品群は、同世代へ多大な影響をあたえた仕事として知られています。90年代には、高梨が「地ベタを垂直に歩行する」と語る『地名論』で、「界隈」を失った東京の地名が持つ時間へアプローチしています。

本展の展示作「SILVER PASSIN’」では、いやおうなく水平に移動する路線バスの車窓越しから撮影を試みています。そして「LAST SEEIN’」では、移動する視点という制約は外され、徒歩を中心に人間の存在が希薄な風景が写されています。それらの、ただ通過の瞬間を無造作に写したかのように見える風景は、私たちに都市の不吉な気配を感じさせます。タイトルに現在進行形が使われているように、そこには、歩行の方法を変えながら制作を続ける高梨豊の「見ること」の現在進行形を見ることができるのではないでしょうか。ぜひ、ご高覧下さい。また、本展での展示作を含む写真集『IN’』が新宿書房より11月10日に発売予定です。

「体は目を運搬するためだけに存在する」これはノーベル賞の詩人ヨシフ・ブロツキーの言葉です。2001〜02年〈青春18キップ〉で全国の在来線をめぐった私は、2008〜11年には老人割引のシルバーパスで都内を走るバスの窓から写真を撮りました。「WIND SCAPE」と「SILVER PASSIN’」です。今年、よわい76 (剛健ではない76歳) の私は、より良く目が運ばれ続けることを願って、毎朝5時に起き小一時間の散歩を続けているのです。「LAST SEEIN’」はなおざりの無い「歩行」を目指す、そのプロセスです。『IN’』はこの三つを束ねた写真集です。今回はSILVERとLASTを展示します。

高梨豊

展示内容

photographers’ gallery
「LAST SEEIN’」/ゼラチンシルバープリント/279×356mm/約20点

KULA PHOTO GALLERY
「SILVER PASSIN’」/ゼラチンシルバープリント/203×254mm/約20点