Kumi Yokoyu/横湯 久美
“その時のしるし/There Once Was”
“花瓶の話/Time Indoors Outdoors” 2013/03/08 - 2013/03/24 12:00 - 20:00 月曜休 / MON CLOSED
祖母の死後は、雪で輪郭のぼやけていく風景、うすれ変容してゆく記憶を、写真やテキストによる作品とともに探ってきました。本展ではphotographers’ galleryと、隣接するKULA PHOTO GALLERYの2会場でシリーズの新作を展開する予定です。
足腰が弱り散歩や庭先へ出ていけなくなった祖母のために生けた庭木や花とその花瓶の話である。その祖母も亡くなり、花を生ける機会は減ったが花瓶は残り、私はそれらの傍らで暮らしている。ここでは、それらの花瓶を軸に、身体、花器・静物、そして、人や空間の移動を見つめていく。神霊のよりつくもの依代 (よりしろ) として、花器には神霊としての花や季節が宿り、家の内と外をつなぐという。命は終わり、人は消え、花瓶の話は途切れたかのように見える。しかし、小さな思いやひとときの記憶が花器や庭木に宿り、死者たちと私たち、そして過去を媒介してくれていると感じることがある。花瓶、静物は記憶を内蔵しつつ、新しい話を加えながら語り続けていく。果たして死者が語っているのかわからぬまま、何者かの語る気配が家の内に訪れることがあった。
ダイレクトプリント、509×394mm、20点
ミクストメディア (ダイレクトプリントとオブジェによるインスタレーション)
「その時のしるし」では、自身が8歳の時に描いた祖母のスケッチ、息をひきとる前夜、通夜の夜、火葬されてから撮影した写真などを手がかりに、哀悼する自らの内に起きた衝動を振り返っていく。祖母の死との関係は、じっくりと取り組んできたシリーズではあるが、供養や呪術の観点から内的な考察を行う点で、新たな試みである。死者の顔の型を苺の汁で紙にとるといった行為、なんと名づけてよいのかわからないが苺のマンデリオンを中心に、写真とテキストで回想していく。
ダイレクトプリント、840×600mm、11点
紙にレーザープリント、840×600mm、1点
展示風景