イベント:Tokyo Culture Cafe 2002 “Reading and photo-projection 2002”

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Tokyo Culture Cafe 2002と題された文学者によるイベントの一環で、「reading and photo projection」-朗読と映写によるコラボレーションが、pgにて行われた。小説家による自作の朗読と、photographers’ galleryメンバーの自作の投映である。

2000円とpgのイベントとしては高い入場料のせいか予約は定員に達せず心配されたが、ふたを開けてみると当日客で大盛況、入場できない人も出る始末となる。

小説家4名と写真家5名。まずは早めに集り、写真を見ながら小説家が自作を朗読する際の写真を選ぶという手順で始まる。新進気鋭の弱冠19歳の佐藤智加が、モノや小動物のイメージの強いハイコントラストなモノクロ、楢橋朝子の「NU・E」を指名。最新作『空中庭園』で新境地を開いた角田光代が、現代の家族やカップルの有り様を無情に提示する蔵真墨の「love machine」を。人間味溢れるトークを展開する盛田隆二は、やはり人間を撮影し続ける王子直紀の「川崎」と、今回のイベント最長老、早稲田文学新人賞を最年長で受賞した向井豊昭は、岩場やスキー場等にロケーションした笹岡啓子の「sightseeing」とカップリングが決まる。

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19:30スタート。いきなりの朗読ではなく、まずは北島敬三のビデオ「kawasaki」を単独上映。以前、川崎市市民ミュージアムで制作したもので、北島の写真作品「PORTRAITS」のプリントをビデオで撮影したのかと思っていると、まばたきをしたり微妙に揺れ動いたりナマであることが知れる。おなじように川崎の住宅地も「PLACES」との関連が覗くことができる。

佐藤は新作『ZWAPPEN』(ツワッペン)をけだるく、かつ繊細に朗読。「NU・E」との相性もよかったのだが、惜しまれるのは機械のトラブルにより映写が中断されたこと。しかしそれにもめげることなく佐藤は一人旅で朗読し終えた。1部最後の盛田は、『いつかぼくは一冊の本を書く』の中から「私小説的ひらひら」を。二人の連繋で王子は突如タイトルを「川崎」からサイトでの連載「風来節」に変更。それに合わせて盛田も「私小説的ひらひら 風来節」として朗読する。約20分で最長だった。

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休憩を挟んで2部は楢橋朝子のDVD「half awake and half asleep in the water」の単独上演で幕開け。水中から陸を見る連作で、プリントとはまた異なる浮遊感の仕上がりとなっている。後半の朗読は向井『エロちゃんのアート・レポート その3 アートは刃』。控え室では物静かな紳士だった向井が「エロちゃん」「ぺろぺろ」と言葉を発しながらユーモラスに熱演。笹岡の厳粛で峻烈なイメージの写真とは明らかにミスマッチだが、たまにくり出される地名が、写真の合間に挟み込まれた渋めの地名と妙にシンクロして濃淡を醸し出す。角田は『だれかのことを強く思ってみたかった』を朗読。時間的には一番短く、今度は蔵が一人旅となる。これでコラボは終了。この後、北島がかつて『朝日ジャーナル』で中上健次と2年間連載していた写真をスライドで見せる。中上の代わりにジミー・ヘンドリックスを大音量でかけるという「掟破り」な、しかし貴重な上映で、場内にアメリカくささを充満させた。