第16回 photographers’ gallery講座
「John Baldessari/ジョン・バルダッサリ」

第16回 photographers’ gallery講座
連続講座
「不確定地帯—コンセプチュアル・アートと写真」(全5回)
第三回「John Baldessari/ジョン・バルダッサリ」
講師:林道郎(美術批評) 司会:斎数賢一郎
2007年4月28日(土) 18:00~


講座概要
コンセプチュアル・アートの雄として60年代から独特のポジションを占めているジョン・バルダッサリ。西海岸を中心に活動してきたこともあり、東海岸中心の美術史では十分に光が当てられてこなかったが、近年その評価は高まるばかりである。
写真、言語、絵画、印刷物など、多様なメディアを柔軟に使いこなしながら機知と乾いた哀愁(?)に満ちた表象批判を展開してきたその仕事を、掘り下げて考えてみたい。

John Baldessari/ジョン・バルダッサリ (1931-)
ナショナルシティ出身のアメリカ、カリフォルニアのアーティスト。後にロサンゼルスに移住。カリフォルニア芸術院のポスト・スタジオ・アートで教鞭をとる。自ら田舎のアーティスト称するが、雑誌を通じて国際的な動向に精通し、66年には絵画を止め、テクスト、ビデオ、写真を使った制作を開始。作品は初期よりウィットと多様性をはらんだ作風で知られる。70年代末からは大きなサイズの写真コラージュ作品をおもに制作している。
http://www.baldessari.org


講座報告
1950年代の「ロードの経験」に対して、60年代には「ハイウェイの経験」が同時代的に共有されていたことを示したうえで、そのクライマックスを持たない作品構造に注目して、林氏はバルダッサリの作品を紹介してゆきます。絵画中心主義に対する抵抗として現れてくる彼の作品は、主として言語に焦点があてられており、「コンテクスト」への関心と論理的な自己言及性を含んだものとして分析されました。なかでも言語ゲームへの関心は、指標の重層的な構造をもった作品や、あらゆる記号を指標として読み替えてゆく作品へと結節されていることが詳述されました。イメージの発生する場所、あるいは着地する場所に亀裂を入れ続けるバルダッサリの仕事は、写真のもつ事後性との関わりにおいて多分に示唆的なものとなったのではないでしょうか。

米田拓朗
Michio Hayashi

Michio Hayashi

Michio Hayashi