第17回 photographers’ gallery講座
「On Kawara/河原 温」

第17回 photographers’ gallery講座
連続講座
「不確定地帯—コンセプチュアル・アートと写真」(全5回)
第四回「On Kawara/河原 温」
講師:林道郎(美術批評) 司会:斎数賢一郎
2007年5月12日(土) 18:00~


講座概要
1960年代後半から《日付絵画(デイト・ペインティング)》をはじめとする《トゥデイ》シリーズを開始した河原温。その制作は現在まで続き、アーティストの死によって終息することが予告されている。河原の代表作であるこのシリーズは、コンセプチュアル・アートの「絵画」作品として認知されている。だがカナダ出身のアーティスト、ジェフ・ウォールはそれをモノクローム絵画と写真の接点に生じたものとして論じている。この批評を出発点として、今回の講座では「写真論」としての河原温を、いくつかのシリーズから検証してみたい。

On Kawara/河原 温 (1933-)
日本出身のアーティスト。1965年よりニューヨークに拠点を移す。初期のドローイング作品から一変して、60年代後半より《日付絵画(デイト・ペインティング)》シリーズなどコンセプチュアルな作品を制作する。《日付絵画》を核とした《トゥデイ》シリーズには他に各暦年をタイプで打ったリストや、「I am still alive.」という文面の電報を世界各地から発信するシリーズなどがある。

参考文献
Wall, Jeff. “Monochrome and Photojournalism in On Kawara’s Today Paintings.” In Robert Lehman Lectures on Contemporary Art, vol. 1. Ed. Lynne Cooke and Karen Kelly. New York: Dia Center for the Arts, 1996, pp. 135 – 156(ジェフ・ウォール「河原温のシリーズにおけるモノクロームと報道写真」、『美術手帖』1998年3月号 169~180頁).


講座報告
モノクロ-ム絵画とフォトジャーナリズムの交錯する場所として日付絵画を読解する、ジェフ・ウォールの河原論の解説から講座は始まりました。林氏はそれに加えて、他にもさまざまな交錯あるいは二重性が見られることを指摘してゆきます。物象化された記号の現前とその指示対象の不在といった写真との類似、あるいはその公的な性格と私的な性格、線的な時間の通時性と点的な時間の共時性、さらには情報としての経験と生きられた経験など。また、こうした二重性とあわせて、儀礼的性格と遊戯的性格の結合なき弁証法が河原の作品群に見られると指摘されました。歴史の表象可能性に対して河原が用いた方法への林氏の読解は、写真のみならず表象媒体全般にわたって再考を促すものとなったのではないでしょうか。

米田拓朗
Michio Hayashi

Michio Hayashi Michio Hayashi

Michio Hayashi