ニック・ヘイムズ 『The Last Survivor is the First Suspect』

ニック・ヘイムズ 『The Last Survivor is the First Suspect』

ニック・ヘイムズ 『The Last Survivor is the First Suspect』

¥8,800

Kodoji Press, Baden 2021
Text by Nick Haymes, English
17 × 24 cm, 480 pages, softcover

在庫あり

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〈Content〉

ロサンゼルスを拠点とする写真家、ニック・ヘイムズが2005年から2009年にかけて撮影した本作は、南カリフォルニアとオクラホマ州タルサを中心に放浪する若い友人たちのコミュニティの記録です。そこでは、友情や絆の芽生えを記録する喜びとともに、やがて訪れるであろう一連の悲劇につながる恐れの感触とがないまぜになって物語られています。撮影から時を隔てた2021年、写真集『The Last Survivor is the First Suspect』としてKodoji Pressから刊行された本作は、若い友人たちへの祝福、そして鎮魂歌でもあります。

写真集では、親密な写真の中を縫うようにして、ヘイムズがのちに手がかりとしたスクリーンショットが織り込まれており、もうひとつの物語へと見る者を引き込みます。撮影が行われたのはソーシャルメディアの普及が始まって間もない頃でしたが、彼はそれぞれの友人たちのグループ間にコミュニケーションの新しい接点があることを鋭く感じとりました。MySpaceやYouTube、オンライン掲示板などのプラットフォームは、人とのつながりを可能にすることで連帯感を生み出すと同時に、新たな応えようのない基準や期待をもたらしました。丹念に拾い集められた登場人物たちの間で交わされる、そうしたさまざまなコミュニケーションのかたちが、不吉な予感をより際立たせています。写真集の中には実在するジオタグやURLのリファレンスが散りばめられており、本書が開く主観的な真実へと見る者を誘なっています。

ヘイムズは10代の頃に生じた極度の人見知りを、カメラによって補うことができたと語っています。「カメラを手に取って身を潜めれば、関わらずとも、再び人々のそばにいて、彼らと親密になれることに気がついた。」写真集の制作に際し、ヘイムズはこの写真群に立ち戻り、写した人々に何が起こったのかを自身のためにつなぎ合わせていきました。そして、この特定の出来事との現在ならではの関わり方を模索し、物事は異なっているようでいてどこか同じでもあることを示唆しています。イギリス人作家L・P・ハートリー(L. P. Hartley)は青春小説『恋を覗く少年(The Go-Between)』の冒頭に、「過去は異国である。そこでは人々の生き方がまるで違う。」という名文を残しています。本作は、この感覚をきわめて明快に表していると言えるでしょう。

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ニック・ヘイムズ Nick Haymes
イギリス、ストラトフォード=アポン=エイヴォン生まれ。ロサンゼルスを拠点に活動。自身の制作以外にも、2010年より「Little Big Man books and gallery」を設立し、数多くのアーティストの写真集・作品集の出版も手がける。


Kodoji Press, Baden 2021
Text by Nick Haymes, English
17 × 24 cm, 480 pages, softcover
836 images on full bleed color plates,
ISBN 978-3-03747-080-0
¥8,800(税込)