展覧会:ジェフリー・バッチェン “時の宙づり — 生と死のあわいで”
IZU PHOTO MUSEUM

pg press no.7で特集した写真史家ジェフリー・バッチェンのキュレーションによる展覧会がIZU PHOTO MUSEUMで開催されています。
“時の宙づり — 生と死のあわいで”
ゲスト・キュレーター:ジェフリー・バッチェン (写真史家)
2010年4月3日 (土) 〜8月20日 (金)
IZU PHOTO MUSEUM
〒411-0931 静岡県長泉町東野クレマチスの丘 (スルガ平)347-1
TEL 055-989-8780 FAX 055-989-8783
「時の宙づり—生と死のあわいで」展は写真史家のジェフリー・バッチェン氏をゲスト・キュレーターに招待して開催される展覧会です。近年、著作が日本語を含む数カ国語に翻訳されるなど、その仕事は国際的に注目を集めています。バッチェン氏が2004年に企画し、ヨーロッパ各地とニューヨークを巡回した展覧会「Forget Me Not: Photography and Remembrance (私を忘れないで:写真と記憶) 」は写真と記憶の関係について考えるものでした。本展はその続編として、写真と時間の関係に焦点を当てています。バッチェン氏自身の写真コレクションを中心に、日本の美術館では普段見ることが難しい19世紀の額入りダゲレオタイプ (銀板写真) や写真ジュエリーなど、300点以上が展示されます。
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「写真が生と死の間で被写体を“宙づり”にし、過ぎ去りゆく時間の流れに被写体が打ち勝つことを可能にする能力、それが本展のテーマです。この“宙づり”は写真によってのみ可能となるだけでなく、フランスの批評家ロラン・バルトによれば、写真の悦楽と狂気の源となるような性質です。
「時の宙づり—生と死のあわいで」は、それぞれの文化や土地に固有の使用例において、こうした写真の能力が19世紀半ばから現在に至るまで、様々に利用されてきた仕方を広く検討します。本展で紹介されるいくつかのジャンルの写真は、バルトの言葉を借りれば「死んでしまっているのに、まるで生きていることを欲するかのように写っている、被写体が及ぼす魅惑」を放っているのです。
これらのジャンルのいくつかは過去のある瞬間を、堅固で手に取れるような現在へと変えます。また他のいくつかは写真を髪の毛、絵の具、書き込みなどと結びつけることで、五感を刺激する体験を私たちに提供します。その体験は、記憶と時間に対する私たちの通常の理解を改めて考え直させるものです。多くの作例が過去と現在、伝統とモダニティを結びつけることから生じる緊張を示しています。特に驚かされるのは撮影者の影が写り込んだスナップ写真の数々です。その中には写真を撮影する行為だけでなく、亡霊のような撮影者の存在が組み込まれています。撮影者は写真の中と外に同時に存在し、そこにいるようでそこにおらず、生と死の間で宙づりになっているのです。」
ジェフリー・バッチェン
【略歴】
ジェフリー・バッチェン (Geoffrey Batchen)
写真史家。ニューヨーク市立大学教授。
氏が企画した「Forget Me Not: Photography and Remembrance」展は2004 年のファン・ゴッホ美術館 (アムステルダム) を皮切りに世界各地を巡回。著書・編著・論文に『Burning with Desire: The Conception of Photography』 (The MIT Press, 1997) 、『Each Wild Idea: Writing, Photography, History』 (The MIT Press, 2001) 、『William Henry Fox Talbot』 (Phaidon, 2008) 、「スナップ写真:美術史と民族誌的転回」 (『photographers’ gallery press』no.7, 2008) 、『Photography Degree Zero: Reflections on Roland Barthes’s Camera Lucida』 (The MIT Press, 2009) など他。代表作である『Burning with Desire』の邦訳が青弓社より2010 年春に刊行予定 (『写真のアルケオロジー』前川修・佐藤守弘・岩城覚久訳) 。