イベント:高梨 豊×赤瀬川原平×倉石信乃
“NOSTALGHIA”

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左から倉石信乃氏、高梨豊氏、赤瀬川源平氏
左から倉石信乃氏、高梨豊氏、赤瀬川源平氏

左から倉石信乃氏、高梨豊氏、赤瀬川源平氏
左から倉石信乃氏、高梨豊氏、赤瀬川源平氏
向かいの部屋イカヅチでの「interlude」展示
向かいの部屋イカヅチでの「interlude」展示
写真集『NOSTALGHIA』 平凡社 定価:6090 円 A4判148頁  ISBN4-582-27756-X C0072
写真集『NOSTALGHIA』 平凡社
定価:6090 円 A4判148頁
ISBN4-582-27756-X C0072

終了後、中平卓馬氏も交えての打ち上げ風景
終了後、中平卓馬氏も交えての打ち上げ風景
9月17日(金)19:00より赤瀬川原平氏、倉石信乃氏をゲストにお招きしてトークショーを開催いたしました。

高梨豊氏の新作『NOSTALGHIA』は、『町』以来となるカラー写真で都市をとらえた写真集として発表されました。今回の展示はphotographers’ galleyに「NOSTALGHIA」、向かいの部屋イカヅチには今作の下地となっているという「interlude」を展示しました。

当日の会場ではまず、高梨氏による本作ができるまでの経緯をお話いただいてスタートしました。

高梨:『町』はなぜカラーだったかといいますと、記録をキチンとやってみようと思ったんですね。実世界に色彩があるわけですから、当然カラーじゃなければ記録にならないという事ですね。モノクロで撮るって事は、一種の抽象になるわけですよ。それと、あの頃の物とか事。事物に語らせるっていう写真をやってみようと思ったのです。

-中略- ぼくは大体ひとつの仕事を始めるときに、わりと方法論というようなことを考える写真家で、始めは決まっていなくても、おぼろげながら方法は見えていることが多いんです。でもこの『NOSTALGHIA』の場合にはそれが無いんです。ただ表面性というか、surfaceというようなことに執着しながら写真を撮っていこうと、それだけでずっとやっていたんですね。だからどういう事になるか分からないけども、今までの方法でまとめていくという事ではない感じでしたね。

それで、そのことを優先して写真を撮っていたんですけど、タイトルに困っていたときに偶然NHKのBSを見てたら、タルコフスキーのあの映画(「ノスタルジア」)をやっていて、本当にずうずうしいんですがそこから頂いちゃって。写真集のタイトルにはこの言葉だなって感じがあって、それで今の仕事をとりあえず終わりにしちゃおうという事にしたわけです。だから今までのぼくの写真のやり方と逆転してるわけですね。始まりと終わりが。そんな感じの写真なんです。

こうして始まったトークショーは、続いて倉石氏が写真集のまえがきに書かれている「底なしの深さのなさ」という高梨氏の言葉を使い、『東京人』の頃から『都市へ』という作品にまとまっていったものとはまったく違った表面に執着するという今作の決意への意見を述べられました。

赤瀬川氏からは『NOSTALGHIA』の解説を書く際に体験されたというメディアの差や、プリントが生み出す大きさのリアリティーについてなどお話しいただきました。

こうして興味深い意見のやり取りが交わされながら進み、観客の方たちからも「『WINDSCAPE』が風景の始まりを自ら体験し直そうとしたものだとすると、『NOSTALGHIA』では風景の終わりということを、なんとなく感じられているのではないか。」、「高梨氏にとって色はどういった働きを持っているのか。」など多くの鋭い質問がでていました。

最後には高梨氏から中平卓馬氏(会場にお見えになられていた)の近作から影響を受けているといった少々驚きの言葉も飛び出し、終了しました。