対談:高梨 豊 × 吉増 剛造
“我らの獲物は一滴の光”

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今回のトークショーは2003年1月10日~1月31日まで企画展として開催された、「我らの獲物は一滴の光」高梨豊写真展の期間中である1月18日に同名の特別イベントとして詩人の吉増剛造氏をゲストに招いて行われました。

なおトークショーの詳細はphotographers’gallery press no.2に収録されています。

まず両氏の関係は吉増氏が季刊『プロヴォーク』第3号に詩作品「写真のための挑発断章」を、そして高梨豊写真集『都市へ』に「古木、HEAVEN !-高梨豊」を寄せて以来の親交の深い関係であり、また吉増氏自身もこれまでに数多くの写真展を開催してきたということもあり今回の企画展に合わせてなんとしても実現させたいイベントだった。

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9月中旬に吉増氏から出演了承の返事をいただいてから、高梨氏と展示の準備を進めているとあれよあれよという間に展示初日を迎え、ついにトークショー当日。両氏ともこの日を楽しみにしていたようで、控え室となったpg officeではとても賑やかないい雰囲気で開演を待たれていた。開演時間の7時を少し過ぎていよいよ開演、お互いに久振りに会ったにもかかわらずさらに観客が居るということもあり、控え室でのようには行かないようだ。間合いを確かめるような時間が少しあった後、リハーサルがあったわけでもないのに、まるで台本が存在するかのように進行していく何とも不思議な光景を眼にすることになる。その不思議な光景を作った張本人は吉増氏。いくつかの資料を手に巧みに進行をしていく。高梨氏はその様子に少し驚いていたようだが、動じることなくテンポよく丁寧に自身の作品について語っていく。両氏のやりとりは高梨氏の初期作品集『都市へ』の中の一枚から『地名論』へと、これまで捉えてきた様々な都市の写真や方法論から吉増氏の撮られる二重露光の写真へと展開していき、最後に満席の会場からの鋭い質疑が続きいつの間にか終了予定時刻をオーバー、イベント終了後も何人かの観客から質問や意見が寄せられる熱気に満ちた一夜となった。

と、本当ならこれで終わるはずだったこのイベントには続きがある。両氏とも一度だけではまだまだ話し足らなかったようで、こちらから前回の続きをとお願いしたところ快諾していただき、大慌てで企画展最終日となる1月31日にセッティング。

緊急追加対談と題し、再びpgにて開催されることとなった。限られた告知期間にもかかわらず予約はあっという間に定員に達し、参加者の関心の高さを感じることとなる。

そして最終日、開演30分前を過ぎても吉増氏は現れない、準備をしながら冷や汗をかいていると電話が入る。声の主は吉増氏、話の内容は前回のやり取りを受けて詩を一編書いたので、皆さんにお配りするコピーを取っているので少し遅れます。とのこと。これには高梨氏もpgメンバー思わず驚く開演直前の何とも嬉しいハプニングとなる。いざ始まると参加者に詩が配られ、高梨氏の最新作「WINDSCAPE」に囲まれて朗読する吉増氏の声が響く会場は、前回とはちがう熱気に包まれることとなった。両氏の話は「地名論」を中心に始まり最新作「WINDSCAPE」、さらに東松照明氏の作品へ話が及んだところで写真評論家の飯沢耕太郎氏が飛び入り参加、観客の方達とも意見が交わされながらも残念ながら時間切れとなり、高梨氏からは3回目もやる?と、恐ろしい冗談も出つつ大盛況のうちに終了となった。 (追加対談の内容は photographers’ gallery File 02「我らの獲物は一滴の光」に収録されています。)
(企画担当:王子直紀)


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